@ 社会人を経験し29歳でのチャレンジ
私は一般の外務専門職試験の受験者に比べ少し変わった経歴を持っています。大学では経済学部に所属し、卒業後は不動産会社に就職して約2年間営業の仕事を経験しました。大学在学中にはまともに語学すら勉強したこともなく、当時は外務省へ就職したいなどということも全く考えたことはありませんでした。
私が外国に興味を持ち始めたのは大学の卒業旅行としてアルバイト先で知り合った台湾人の友人宅を訪問した時です。その際に現地で多くの台湾人と交流していく中で中国語を勉強して彼らと話をしてみたいという思いを持つようになりました。その後、働きながら週1回のテレビの語学講座を活用し趣味程度に中国語の勉強をしていましたが、しだいに本格的に学びたいという思いが強くなり、就職して約1年半が経過した頃に留学する決意をしました。
外務省の仕事に興味を持ったのは、上海での留学中に様々な中国人と知り合い日中関係について話すことがあったことがきっかけです。また、2005年に起こった一連の激しい反日デモを現地で経験したことにより日中関係改善のために少しでも手助けになるようなことがしたいという思いが強くなり帰国してからの受験を決意しました。
帰国後はアルバイトをしながら公務員試験専門の喜治塾に通い試験勉強をし、2回目の挑戦で合格することができました。私の場合、29歳という年齢がハンディキャップになるのではないかと常に不安に感じていました。しかし、筆記試験を着実にこなし、面接で社会人時代に経験してきたことやこの仕事がしたいという強い意志を伝えることができれば合格の可能性は十分にあると思います。実際に合格者の中には社会人経験者もたくさんいます。
社会人経験者やそれ以外でも20代後半の方などは挑戦すること自体を躊躇してしまう人もたくさんいると思います。しかし、この仕事がしたいという強い意志があればチャレンジする価値は十分にあると思います。
A 私の専門試験対策
<憲法>
憲法は主に喜治塾での講義と芦部先生の「憲法」を活用して勉強しました。近年の試験では、判例からの出題が目立つので理論だけではなく最新のものも含めた判例もチェックしておくことが必要です。暗記量は膨大ですが根気強く勉強していく必要があると思います。また、頻出の条文や文言などを丸暗記しておくと記述の際に非常に便利だと思います。
<国際法>
国際法は主に喜治塾での講義とそのレジュメ及び判例百選を活用して勉強しました。国際法担当の先生は国際法学会での情報にも精通しており、的確な情報やアドバイスもして頂けたので喜治塾で教わった以外のことは殆ど手を付けず、レジュメの内容を繰り返し暗記することを心掛けていました。
<経済>
経済は一番の苦手科目でした。喜治塾での講義を基本にしていましたが、そのほかにも市販の記述対策本など活用しました。しかし、経済の問題に関しては近年軟化傾向にあると思います。基本となる部分をしっかり押さえておけばある程度の回答は作成できると思いますので、苦手な人も諦めず地道に勉強していくことが大切だと思います。
B 私の教養試験対策
教養試験は科目数が多いので要領よくやることが必要です。苦手な科目は無理に深追いし過ぎない方が良いと思います。私は計算問題が苦手だったので歴史、時事、地理、思想などの文系の科目に力を入れました。
歴史は塾での講義とレジュメ以外にナツメ社の「図解雑学」を活用し、友達と問題を出し合ったりして知識を定着させるようにしました。
時事は塾の時事対策講義と「速攻の時事」を活用しました。外務省専門職員採用試験の教養試験は国Uと同じ問題なので「速攻の時事」を覚えれば多くの問題には対応できると思います。
地理は塾での講義以外に自宅の部屋に世界地図を貼り各国の位置や主な河川や湖の場所など覚えるようにしていました。実際地図の知識だけで解けることができた問題もありました。
資料解釈は塾の講義以外には何もしていません。しかし練習して慣れてくれば多くの問題は解けるようになると思うので、できるだけ多くの問題を解くことが大切だと思います。
数的処理・判断推理は苦手だったので、塾の講義で取り扱った問題以外には手を出さず、本番で比較的やさしい問題を確実に得点できるようになることを心掛けて勉強しました。
筆記試験対策は専門科目も教養科目も覚えなければならない量が膨大です。こんなに覚えきれるのかと不安に感じたことも多々ありました。勉強は自宅や図書館でやることもありましたが、特にそのような精神状態に陥った時などには塾の自習室を利用していました。塾へ行けば同じ試験を目指している仲間もいますしモチベーションの維持・向上にとても効果的です。また、喜治塾は比較的少人数なので気軽に講師の先生に質問をしたり、試験科目以外のことでも、例えば国際情勢のことなどについての説明や意見などを聞くことがきたことは勉強を継続していく上で非常に役に立ちました。
C 私の2次試験対策
1次試験合格者数は110人で、最終合格者数は47人(平成19年度)です。2人に1人以上が2次試験で落とされてしまうことを考えると、やはり前もって十分な準備をした上で本番に挑まなければなりません。外務省専門職員採用試験の2次試験は集団討論、外国語面接、個別面接の3種類がありますが、それぞれについての私は以下のような対策をしました。
<集団討論>
集団討論のテーマは国際関係から出題されます。そのためある程度の知識を身につけておかなければなりません。私は喜治塾の集団討論対策の国際情勢に関する講義や新聞の他にBSニュース「今日の世界」という番組を見るようにしていました。このニュースはその日の国際的な動きの他に様々な特集を組み専門家の解説なども加えて説明してくれるので国際関係に関する知識を身につけるうえで非常に役立ちます。また具体的な議論の進め方については、同じ外務省専門職員受験者と共に討論形式の勉強会を行ったり、喜治塾主宰の練習会にも一度参加して雰囲気に慣れるようにしました。集団討論で私が心掛けていたのは、まずできるだけ多く発言をして印象を残すこと、そして他の人が発言している時にはできる限り顔を上げて目を見て聞くことです。人によってはメモを取ることに気を取られて下ばかり向いている人もいますが、こういった発言以外の部分でも積極的に議論に参加している印象を与えられるのではないかと思います。
<外国語面接>
試験は中国語で受験しました。私は留学する前は外語大や語学学校に通っていたことはなく1年半の留学生活が唯一の中国語学習歴です。帰国後は中国語を話す機会が減ってしまったので中国語ジャーナルやスカイパーフェクTVの中国語放送などを聞いて少しでも中国語に接するように心掛けました。本番の面接は12分です。まずB5用紙に書かれた文章を2分程度で黙読し、その後音読を行った後で内容に関する質疑応答が行われます。四字熟語の意味について聞かれたものもあり、中には「分りません」と答えたものもあります。外国語面接は時間が短くあっという間に終わってしまうので、多少文法が間違ったりしても積極的に伝えようとする意欲が大事だと思います。
<個別面接>
個別面接は2次試験の中で一番時間をかけて対策しました。本番ではかなり厳しい質問をされる可能性もあるので十分に準備をして挑まなければなりません。私は1次試験合格後にまず喜治塾の面接練習を予約し、それに向け小学生時代にまで遡って簡単に自己分析を行いました。大体どのようなことを話そうかということについて頭の中で整理したつもりでしたが、練習の際には志望動機すら上手く話すことができませんでした。大体ではなく具体的な回答をある程度考えていなければ本番で厳しい質問をされた場合に落ち着いて回答が出来ないということを思い知らされました。そこで試験までの間、予想される質問に対し15〜30秒で答えられる返答を数多く書き出し、その内容を見ないでも答えられるようになるよう何度も口に出して答える練習をしました。丸暗記することは難しいですが、何度も練習することは自分の考えを整理していく上でも役に立つと思います。
また本番では、質問に対してできる限り表情豊かに笑顔でハキハキと返答するように心掛けました。このような具体的な返答の内容以外でも面接官に対し好印象を与えることができると思います。
D 最後に
私は学生の頃はまともに外国語すら勉強したこともありませんでした。社会人経験を経て25歳になって初めて真剣に外国語の勉強を始め、中国への留学を経て帰国後に試験勉強を開始し今年試験に合格することができました。これから外務省専門職員採用試験を目指そうという方にも様々な経歴を持った人がいると思います。この試験の合格者にも大学生から社会人経験者まで様々な経歴の人がいますし、私のようにスタートが遅い人間でも合格を勝ち取れる可能性があります。年齢的に不利なのではないかと考えている人やそれ以外の条件で難しいのではないかと考えている人も諦めず是非チャレンジしてほしいと思います。頑張ってください。
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