<特集>
数的推理で
頭の体操
公務員試験の試験科目のひとつに「数的推理」という分野があります。そこでは、与えられた条件を使ってひとつの結論を推理する力が試されます。実際の問題をみてもらったほうが早いので、まずはみてください。数学のようですが、数学の問題とは、少し違っています。与えられた条件を整理して結論を導く力、推理する力が試されます。遊び感覚でチャレンジしてください。
【問題】
SEND+MORE=MONEY
上の各アルファベットの文字は、0〜9までのどれかの数字に対応しているという。
それを求めよ。
いきなりこの問題では難しいので小手調べとして次の問題をやってみよう。
4□3
+□6□
─────
1222
これならすぐにわかるでしょう。要するに「繰り上がり」に気をつければよいのです。上の問題もポイントはこれだけです。あとは、地道にやっていくのみ。複数の可能性があればその可能性を追求していくのです。
推理力は行政をあずかる公務員にとっては不可欠の力です。なぜなら、行政の現場で起こる問題は答えのわからない問題ばかりであり、わからないながらもできうる限りの情報を収集し、それを分析・検討して推理し、その時点での一番妥当な決断をくだすのが仕事だからです。そういう意味がこの科目にあります。
【解答】
SEND
+MORE
─────
MONEY
S+Mの足し算を考えた場合、下の位からの繰り上がりを考慮しても、MONEYの「M」が2以上になることはない。よって、M=1となる。これはわかるよね。
次に、Sに入る数字を考えると、S+1が次の位に繰り上がらなければならないので、8か9に限定できる。どっちだろう? 試してみよう。
Sに8を入れた場合、百の位からの繰り上がりを考慮すると、「O」(オー)には0(ゼロ)が入る。すると、SENDの「E」には、9しか入らなくなる。すると、MONEYの「N」に0が入ることとなるが、すでに「O」で0を使っていることにより、Sには、8が入らないことが分かる。
よって、Sには9が入ることとなる。Mは1であるから、「O」には0が入ることが分かる。
次に、SENDの「E」とMONEYの「N」の関係を考えると、十の位からの繰り上がりを考慮しても、E+O+1=Nとなることが分かる。O=0だから、E+1=N。可能性のあるEとNを順に試していく。
E=7,N=8とすると、Rには8か9が入ることとなるが、すでに使われているので不可。
E=6,N=7とすると、Rには8か9が入ることとなるが、9はすでに使われているので不可。8を入れると、Dには5か4が入らなければ成立しなくなるが、Yに入るべき1も0もすでに使われているので不可。
E=5、N=6とすると、Rには8か9が入ることとなるが、9はすでに使われているので不可。8を入れると、繰り上がりを考慮してDには7が入り、Yには2が入り、与式は成立する。
E=4,N=5とすると、Rには8しか入らない。Dには6か7が入る可能性があるが、その際、Yに入るべき0と1がすでに使われているので不可。
E=3,N=4とすると、Rに入る数字は8しか残っていない。またDには7しか入らないが、Yに入れるべき0がすでに使われているので不可。
よって、
SEND+MORE=MONEY は
9567+1085=10652
となり、S=9、E=5、N=6、D=7、M=1、O=0
R=8,Y=2
となる。
数的推理の取り組み方 |
数的推理は
暗記科目である
数的推理というと「数学的なセンスが必要」と思いがちである。究極的にはそうなのかもしれない。しかし、こと公務員試験に合格するということでいえば、「数学的センス」の争いにはなっていないのが現状だ。
「数学的センス」の前提となる基礎的な知識の部分ができていない人が多い。それら前提としての知識がなければ、「センス」のあるなし以前の問題である。苦手な人は、とにかく基礎知識、例えば、約数とはなにか、確率の求め方、因数分解の公式……これらをまずはきちんと勉強しよう。
この部分は、知識として対応できる分野である。つまり暗記だ。そして、実はその程度の勉強で十分合格はできてしまうのだ。センス、センスと大騒ぎする必要はない。
数的推理で
不合格にはならない
数的推理で合格する人はいるけれど、数的推理で不合格になる人はいない 。
合格した塾生と話してみると「数的推理は1問もできませんでした」「時間がなくて手がつけられませんでした」という人が結構多い。1問も手をつけずに合格している人も結構いる。
だから勉強をしなくてもいいといっているわけではない。行政の仕事をこなしていくうえで、数字を抜きに語ることはできない。確実な数学の基礎知識はきちんと勉強しておくべきだ。そうではなくて、「センス」を養うことにとらわれすぎて、あたふたするなかれということをアドバイスしておきたい。
数的推理問題集の
選び方
気持ちはわかるが、苦手な人ほど「あっという間に解ける」「裏ワザ」という文字が躍る問題集は避けたほうがよい。また過去問集も最初は避けよう。それより基礎事項がきちんと数学的に(算数的に)説明してあるものを選ぼう。