<特集>

秋からはじめる
公務員試験対策


秋は、公務員試験の勉強を開始する人が最も多い時期である。
公務員試験というと、科目が膨大で、1〜2年間みっちりと勉強しなくては合格できないと思っている人もいるかもしれないが、実際は、秋から勉強を開始すれば余裕をもって来年の夏の公務員試験にのぞむことができる。
今からはじめても間に合わない……と決めてかからずに、公務員という職業に興味を持った方は、ぜひチャレンジしてほしい。
ここでは、公務員試験の仕組み・勉強法について簡単に説明する。


1.公務員になるためには

 公務員には国家公務員と地方公務員があり、国家公務員になるためには「国家公務員試験」を受験し、地方公務員になるためには地方自治体ごとに実施される試験を受験しなければならない。
 国家公務員の場合は、I種・II種・III種試験が実施されており、I種・II種は大学生・大卒者、III種は高校生・高卒者が受験する試験となっている。I種試験合格者は、いわゆる「キャリア」と呼ばれる公務員となり、国の政策形成に携わる。II種試験は、採用者数が多く、最も多くの大学生が受験する試験であり、中央省庁および出先機関に採用される。
 国家公務員試験の大きな特徴は、官庁訪問があることだ。合格=採用ではない。1次合格後に官庁訪問(自ら希望する官庁や出先機関を訪問し、採用面接を受ける)を行い、内定をもらわなければならない。
 また、国家公務員の中でも専門性が高い職種については独自の試験が実施されている(外務専門職員、国税専門官、国立国会図書館、労働基準監督官、法務教官、裁判所事務官、家庭裁判所調査官補、参議院事務局、衆議院事務局、防衛庁、航空管制官など)。
 地方公務員にいては、地方自治体ごとに試験が実施されている。東京都庁に就職したければ都庁の試験を、千葉市に就職したければ千葉市の試験を受験しなければならない。また、警察官や消防官は地方公務員のため、地方自治体ごとに試験が実施される。

2.どのような試験なのか

 大学生・大卒者が受験する試験は「大学卒業程度試験」と呼ばれ、試験によりI種(II種)・I類(II類)・上級など名称が異なる。大卒程度の試験と呼ばれるが、実際には大卒の資格が必要のない試験がほとんどで、年齢などの要件を満たしていれば受験できる。
 試験科目は、高校までの知識・知能について問う「教養試験」と、法律や経済など大学の専門課程で学ぶ科目について問う「専門試験」があるのが一般的で、両方を合わせて約30科目から出題される。これら30科目ある教養・専門の「択一試験」、専門科目の「記述式試験」、時事問題など一般的な課題について論述する「論文試験」などの筆記試験に加え、人物を見る「面接試験」「集団討論」や試験によっては「適性試験」「体力測定」が実施される。

<択一試験の科目(行政・事務系)>
◆ 教養科目
・知能分野
 文章理解・判断推理・ 数的推理・資料解釈
・ 知識分野
 人文科学(日本史・ 世界史・地理・思想・ 文学芸術)
 自然科学(数学・物理・ 化学・地学・生物)
 社会科学(政治・経済・ 社会)

◆ 専門科目
・法律(憲法・民法・ 行政法・労働法・商法・ 刑法など)
・経済(経済理論・財 政学・経済事情・経 済政策など)
・行政(政治学・行政学・ 社会学など)

3.試験の実施時期は?

 大学卒業程度試験の多くは6〜7月の夏の時期に実施される。6月第2日曜日の国家I種試験を皮切りに、7月中旬まで毎週日曜日には何らかの試験が実施されているという状況になる。
 多くの受験生は、3〜5この試験を併願するが、中には警察官などの試験を合わせて10以上受験する人もいる。公務員試験は、年齢などの受験資格を満たし、かつ試験日が重ならない限りは併願が可能である。注意したいのは、都庁と特別区(東京23区の合同試験)、道府県庁と政令指定都市は同日に実施される点である。千葉県と千葉市、広島県と広島市など、県と市の双方を受験することはできない(ただし、今年の神奈川県の試験は例外的に12月の実施となる)。
 また、市役所試験の多くは9月に実施され、これ以降も10月、11月に試験を実施する市役所もあるが数は少ない。

<主な大卒程度試験の日程(平成14年度)>
◆6月第2日曜日
 ・国家I種
◆6月第3日曜日
 ・東京都庁
 ・東京23特別区
 ・裁判所事務官
 ・国税専門官
◆6月第4日曜日
 ・道府県庁
 ・政令指定都市
◆7月第1日曜日
 ・国家II種
◆9月第3日曜日
 ・市役所

4.勉強の開始時期は?

 では、公務員試験受験に向けて、いつ頃から、どのような対策をとればいいのか。
 まず試験勉強の開始時期だが、今の時期が来年の受験に向けてはベストシーズンだと言える。多くの受験指導校では、大学3年生の春から勉強を開始しないと合格は難しいというアドバイスをしているが、そんなことはない。
 9〜11月の秋の時期にスタートできれば、無理なく勉強を完成させていくことができる。当塾では、試験の年の2月(試験の4ヵ月前)に勉強を開始する講座を設けており、その時期からでも間に合わせることはできるが、週に6日、朝から夕方までの講義があるタイトなスケジュールになっている。それに比べ、秋から開始するクラスは週4日、夜の時間に講義があり、大学との両立や講義の復習が無理なく行え、期間的にも中だるみすることなく、非常に良いペースで学習を進めることができる。
 また、独学中心で勉強を進める場合でも、民法や経済など自分ひとりでは理解しづらい科目だけでも予備校の講座を利用するなどして効率性を高めることをお勧めしたい。
 全般的な勉強方法としては、やはり予備校で講義を受講することが近道ではあるが、自分自身で勉強できる得意な科目がある、金銭的な余裕がない、といった場合は市販教材での勉強と合わせて苦手科目の講義を予備校で受講するといった方法がよいだろう。科目の数が多いため、独学の場合は、ひとつの科目に時間をかけすぎてしまったり、分からない部分を理解するのに様々な文献をあたらなければならなかったりと、科目のバランスや効率性を欠いてしまうことがあるので注意したい。

5.民間・教職との併願は可能か

 公務員試験の直前期に民間の就職活動や教育実習の時期が重なるため身体・精神ともに負担は増すが、もちろん不可能ではない。公務員試験の勉強を早めに完成させることが、両立を成功させる鍵になる。

6.公務員の採用について

 先の項目でも触れたように、国家公務員試験は、官庁訪問を行い内定を得なければ、採用されることはない。官庁訪問を成功させるためには、迅速な行動と情報収集が不可欠である。採用時期については、一般的には翌年の4月だが、既卒者などすぐに勤務可能な人は最終合格発表直後の10月に採用されることもある。
 国家公務員試験以外ではほぼ合格=内定となるが、合格順位が下位の場合、4月に採用にならないことがあるため、上位で合格することが大切である。